ワタベウェディンググループの情シスから"みんなの情シス"へ!!

情報データ管理が進み、企業の情報システム部門の重要性は、より大きくなっている。その中でブライダルだけではなく、年々事業の幅を広げているのがワタベウェディンググループ。そのシステム統括部のメンバーが目指す、これからの"情シス"とは?

情報システム改革の必要性

1枚目.png▲左からシステム統括部の福富 啓之(部長)、赤坂 弘樹(グループマネージャー)、石毛 信次、髙橋 力也

福富は2017年から、ワタベウェディンググループのシステム統括部で部長を務めている。これまでもいくつかの企業で情報システム部門を担っていたが、自分自身の結婚をきっかけに、ブライダル業界に携わるようになった。

福富 「自分が結婚をしたときに、みんなに祝ってもらえる結婚式っていいなと思って、この業界に興味を持ちました」

ちょうどそのとき、ワタベウェディングの事業戦略にブライダルのプラットフォームをつくるという話を耳にした。「おもしろそうだな」と思ったことから同社の仲間に加わり、早速情報システムの改革に取り組んだ。

ところが、入社したワタベウェディングの情報システムは、グループの中で情報システム改革の未来が不明確である状況が続いていた。さらに、万年運用がメインとなる業務形態から脱却ができておらず、手入力で情報を転記するなど、アナログなことが多く行われていた。そういった背景から社内システムの活用も中々進まず、改革前の現場は事務作業に追われていた。

福富 「着任して蓋を開けてみると、最新の仕様書がないなど、手探りの状態で進めるしかありませんでした。当社はさまざまな事業が合わさったグループのため、そこも問題のひとつでした」

システム統括部によるワタベウェディンググループの情報システム改革は、この様な状態から始まったのだった。

インフラ導入によるコミュニケーションの統一

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▲社内勉強会で話す赤坂

ワタベウェディングは創業60年以来、リゾートウェディングを提供している企業である。しかし現在はリゾートウェディングだけではなく、衣裳の内製事業やフォト事業、旅行、ホテル雅叙園東京、ホテルメルパルクなどのホテル事業、フリーペーパーなどのメディアまで手掛けるなど、年々事業数や規模が拡大している。

そのこともあって、福富はワタベウェディングだけではなくグループ全体の改革が必要だと感じ、グループ全体の情報システムの状況を把握することから始めた。まずはメンバー集めを実施し、かつて一緒に仕事をしていたメンバーを招集。一気に改革をスタートさせる。

福富 「それぞれの会社ごとに現場の声を集めてみると、『システムが使いにくい』という意見のほか、運用ルールにこだわりすぎている現場や各担当ごとに見ている方向がバラバラなど、多様な事業を行っている会社だからこそ、さまざまな悩みが見えてきました」

各社の声を集めていく中で福富が感じたのは、コミュニケーションとしての道具を統一する必要性だった。

赤坂 「担当業務が異なると、意識合わせができていないと感じました。思っていることも違うし、課題感も違う。そこでワタベウェディングのグループ全体で、コミュニケーションを一緒にする必要があると感じました。まずはメールなど、ネットワークをはじめとした足元のインフラ部分から統合しなきゃいけないなと」

赤坂は共通のインフラ導入時の過程を振り返った。

赤坂 「創業 65年以上の歴史のある会社だからこそ、これが当たり前という社内の常識のようなものがありました。これから取り組んでいくものをわかっていただくために、何度もコミュニケーションを取ったり、理解を得られるまで説明したりしました」

そうやってただシステムを導入するだけではなく、システム統括部門のコミュニケーションを大切にする姿勢を貫き、社内の協力を得ながら、グループ全体の共通インフラの導入を行っていった。

やがて社内に同一インフラを導入し、さらにはグループ会社間の情報が公開されている社内ポータルサイトも開設できるまでに至った。このサイトによって、グループ会社間の情報をすぐに知ることができ、お客様へグループ会社の最新情報などをお伝えできるようになったのだ。またこれによってワタベウェディングの海外挙式を申し込んだお客様へ、グループ会社の販売するお得な海外旅行のツアーや、国内での披露宴などの案内がしやすくなっていったという。

赤坂 「さらに、各社の出来事などを伝える社内ブログが設置されたことによって、グループ会社の働きがわかるようになり、切磋琢磨するなどの効果も生まれているようです」

グループ間でのコミュニケーションの統一は、いろいろな面でグループ会社全体に良い影響を与えた。

現場と一緒に行った改革

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▲社内での打ち合わせ風景

次に取り組んだことは「集客」という、ウェディングにとって重要なオペレーションシステムについての整備だった。石毛はセールスフォースとマーケティングオートメーションが大きかったと語る。

石毛 「情報が一元化されたことで把握しやすくなり、お客様に応じたきめ細かな対応が実現しました。現場のプランナーや衣裳コーディネーターからは、『あらかじめお客様のご希望がわかっているので、お好みのドレスやプランをご提案しやすくなりました。お客様に何度も同じことを聞く必要がないため、スムーズにお打ち合わせも進みます』という声も挙がっており、とても好評のようです」

石毛はこのオペレーション革命の成功要因を、「店舗で実際に接客をする方々や、コールセンターの皆さんと実施させていただけたのが大きかった」と振り返る。全体に関わる情報システムは、ひとつの部署だけではうまくいかない。ここに情報システム部門の「現場の声を大事にしなければいけない」という信念が表れている。

石毛 「現場と行った改革のひとつは問合せ先の一元化です。今までコールセンターは新規の申込のみを担当していましたが、既にご来店いただいたお客様からの電話対応についても、店舗以外で対応可能な案件はコールセンターに集約しました。

たとえば、参列者の服装についての相談などはコールセンターで対応できるようにしました。この改革はまだ一部の店舗でしか実施されていませんが、実施店舗ではスタッフが電話対応に割く時間を減らすことができました。これによって接客などの業務に集中できるようになり、効率が上がって、残業時間が減少するなど働き方改革にも貢献しています」

このようにワタベウェディングの情報システムは大きく進み、グループ会社にもその改革は広がっていった。

改革はワタベウェディングにとどまらない

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▲システム統括部の仕事風景

そんなワタベウェディンググループに、2019年6月3日、新たなシステム会社が加わった。会社名は「SUNITED」。これは"Solution(問題解決)を行うIT Service事業であり、Synergy(相乗効果)を両社ともに得て、互いにSuccess(成功)していきたい。そして互いにUnited(団結)して進んでいく。"というビジョンからきている。一部門から、ひとつの会社が誕生したのだ。

「SUNITED」が担う主な事業内容は、ITコンサルティング、システム開発、運用事業、人財育成、人財エージェントなど。ワタベウェディングという事業会社から生まれた強みはどのようなものなのだろうか?

福富 「『 SUNITED』は事業会社のシステム部門でもあるため、 ITベンダーと異なって、長期運用ナレッジに基づいたシステム導入が可能という強みがあります。またシステムの企画、開発、運用の3 拍子揃った設計と導入が可能となっており、企画だけ、開発だけ、運用だけの中途半端なコンサルティングはしないです。

さらに、私を含めメンバーは過去 10 数年、年商 500~ 1,000 億弱規模の事業会社のシステム部門を統率してきた実績があるため、クライアントの次なるステージへの IT化デジタル化における提案と運用が可能です」

さらに、SUNITEDは "みんなの情シス"という画期的なサービスを計画している。このサービスの構想は、福富が社内勉強会を実施していたときに生まれたものだ。

福富 「社内であらゆる業種のシステム担当者を集めたIT勉強会を実施していたときに、『いろんな業種で働く人の仕事を聞くと、お互い手伝えたら大きな力になるのでは』と感じたんです」

そこから福富たちは、自分の会社に所属しながら他社の案件に携わることができるプラットフォームの構築に向けて動き出した。

高橋(力) 「まず『SUNITED』の中に、コワーキングスペース "みんなの情シス " をつくります。『SUNITED』のメンバーとクライアントの情報システム担当者でチームを結成し、 "みんなの情シス "でクライアントの課題解決やシステム開発や運用をスタートさせるのです。これはクライアントのプロジェクトが落ち着いたタイミングで、他社のプロジェクトにも参加できるというサービスになっています」

こうすることで、クライアントとなる事業会社は自分の社員が他社の事業開発にも関われるため、異業種経験を積んで人財育成につなげられる。エンジニアは雇用が継続した状態で他社の案件を担当できるため、収入やスキルのアップにつながるなど、将来的には副業ニーズを満たせるだろう。まさにお互いwin-winになるのだ。

福富 「結局、どこの会社も採用に困っています。また事業のアップダウンによって IT投資も左右される。本来やるべきアクションも、そういう課題によってできないこともあります。人財育成も部門の人数が少なくなるほど、限界も発生するんです。

だからこそ、みんなが会社の壁を越えて団結していけば大きく成長できるのではないか? と。そのような想いから、このような事業があったらおもしろいなと感じ、始めてみました。これからどのようになるか楽しみです。情シスの未来を、みんなの力で変えていく世界をつくりたい!」